ひねもすのたりのたりのたり

西澤さんの被弾状況だけ追究しておいて、ホリブンを放置しているのは公平ではないので、ホリブンの被弾状況も。

ホリブンは乙飛１０期、昭和１３年に予科練に入隊しています。
予科練、飛練を経て、最初の配属先がラバウルの台南空。『日本海軍戦闘機隊』の「エース列伝」堀光雄飛曹長の欄には「（１７年）５月台南空に発令され」と書いてありますが、台南空の行動調書に初めて名前が出てくるのは７月２日。ラバウルの基地上空哨戒任務です。

ラバウル時代の堀３飛曹はほとんどラバウル基地上空哨戒任務ばかりで、西澤さんたちのような大きな出撃はありません。
８月２５日に基地に来襲した「Ｂ１７×１、交戦逸す」、９月１１日同じく基地来襲の「Ｂ１７×１、追撃逸す」、９月１５日「Ｂ１７×４、攻撃逸す」。
記録に残っている堀３飛曹の敵との遭遇はこれだけです。被害無しなので、被弾はしていないようです。

１１月に台南空が２５１空になり、内地で再編成となったとき、堀２飛曹はラバウルの５８２空に置いて帰られてしまいます。

５８２空時代は敵と交戦する機会も増えてきました。
１７．１１．１８　　Ｂ１７×１、攻撃撃退
１７．１２．８　　　敵機邀撃哨戒
１７．１２．１０　　中攻隊直掩
１７．１２．１２　　基地上空哨戒
１７．１２．１３　　船団上空直衛、Ｂ１７×３攻撃、「被弾」
１７．１２．１４　　駆逐艦上空直衛、Ｂ２４×６攻撃、「被弾」
１７．１２．１８　　対潜警戒、Ｂ２４×４攻撃
１７．１２．１９　　船団上空哨戒
１７．１２．２６　　上空哨戒　Ｂ１７×１、「被弾」
１７．１２．２７　　ブナ敵陣地攻撃、Ｐ３８、Ｐ３９と交戦？
１７．１２．２９　　輸送隊直掩
１８．１．１　　　　上空哨戒、Ｂ１７×１攻撃
１８．１．２　　　　敵艦船攻撃
１８．１．６　　　　モレスビー攻撃隊直掩、天候不良のため引返す→基地上空哨戒
１８．１．７　　　　ラエ輸送船団上空哨戒、Ｐ３９×１２～６機と交戦、
　　　　　　　　　　　「被弾により落下傘降下無事」

と、まあ、こんな具合。
５８２空時代、２ヶ月ほど（１１月１８日から翌年１月７日なら５０日ほど）の間に１５回搭乗しているとして、そのうち８回敵機と交戦。その８回のうち４回「被弾」というのはいかがなものでしょうか。
西澤さんと比べるのは酷ですが、「当たりすぎ」です。

ホリブンも自分の手記に、１月７日（ホリブンは「８日」と書いている）、被弾して落下傘降下し、「海の中でウロウロ」しているときに、一昨日（１月５日）、歴戦の分隊士・輪島（由雄）少尉に、
「貴様は最近出撃するたびに被弾してくるが、あまり無茶をするなよ、よく敵を見るんだ」
と言われたことを思い出した、と書いています。

周りが見てもホリブンはどうも「危ない」状況だったようです。

このとき、ホリブンはいつもはしていない落下傘を装着していました。
出撃前に、していないのを司令に見とがめられ、
「今日は味方上空だから」
と言われ、慌ててつけに走ったのです。

行動調書には「無事」と書いてありますが、ホリブンはまったく無事だったわけではありません。右腕骨折、左右大腿部擦傷、出血はなし。
１９時間海の中をウロウロしたあと駆逐艦磯風に拾われ、病院船氷川丸で内地送還されてしまったそうです。

人間、何が幸いするかわからないものです。
このとき、落下傘をつけていなければ、おそらく３４３空の「堀光雄飛曹長」は存在しなかったでしょう。
そして、このとき内地送還されず、そのまま５８２空で戦い続けていたとしたら・・・・。

余談。
いままで全然気にしていなかったのですが、こうしてみると、ホリブンはラバウル時代、ほとんど戦闘機とは戦っていないですねー。爆撃機ばっかり。
ホリブンは手記に落下傘降下した時の交戦相手をＰ４０と書いていますが、行動調書ではＰ３９になっています。３９だろうが４０だろうが、どっちでもいいじゃないか(^o^)ということで！