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トラトラトラ2007年12月08日 07時55分10秒

ハセガワ1/48九七式艦上攻撃機
今日の記事を予測していた人もいるのではないでしょうか。
「トラトラトラ」って阪神ネタではないですよ、言っておきますが。

そうです。昭和16年12月8日、日本海軍がアメリカと戦争を開始した日です。つまり、真珠湾攻撃の日。

映画のタイトルにもなっているのでご存じの方も多いと思いますが、「トラトラトラ」というのは「我奇襲に成功せり」という意味の略語電報です。

この日、赤城、加賀、飛龍、蒼龍、翔鶴、瑞鶴という6隻の空母から真珠湾を目指して多くの飛行機(零戦、九九艦爆、九七艦攻)が飛び立ちました。
その飛行機隊の総隊長は淵田美津雄中佐。本来なら自ら飛行機に搭乗して指揮を執るような立場ではないのでしょうが、見込まれて総隊長になり、自ら九七艦攻の偵察席に乗り込み全軍の指揮に当たりました。

真珠湾に到達する直前、淵田中佐からある信号が発せられました。
それはこの日の攻撃方法を決める重要な信号です。もし、米軍が日本軍に気づいていなければ「奇襲」ということで、村田重治少佐の雷撃隊(九七艦攻)がまず突入し米軍が防御砲火を開く前に戦場離脱、続いて水平爆撃隊(九七艦攻)・急降下爆撃隊(九九艦爆)が攻撃をかける、という手はず。
もし、気づかれて反撃があった場合には「強襲」ということで急降下爆撃隊と水平爆撃隊が先に攻撃をし、敵の反撃を抑えてから雷撃隊が突入する、という手はずに決められていました。
なるほど・・・・とうなずける作戦なのですが、ここで手違いが生じます。
淵田中佐から各隊への連絡は、なんと、拳銃による発砲だったのです。
どんな音がするのかわかりませんが、淵田中佐が「パン!」と拳銃を撃ったら「奇襲」、「パン、パン!」と撃ったら「強襲」と決められていたそうなのです。これ、爆音を響かせながら飛んでいる飛行機上での話です。
無線はないのか!と思われるかも知れませんが、隠密行動だったために、無線連絡は禁止されていたようです。(「トラトラトラ」や「トトトトト・・・・」がいいのなら、ここも無線で・・・・と思うのですが)
とにかく、淵田中佐は拳銃をぶっ放しました。「パン!」です。「奇襲」の合図ですね。
村田少佐(雷撃隊)は了解して雷撃のために高度を下げ始め、高橋赫一少佐(急降下爆撃隊)は高度を上げ始めました。作戦通りです。ところが、制空隊の板谷少佐(零戦)が、やっぱりというかなんというか、この信号弾に気づかなかったようなのです。
で、淵田中佐は、ならもう一度と「パン!」とやりました。
すると・・・・
「よっしゃ、2発。強襲か! おれの出番や!!」と言ったかどうか定かではありませんが、強襲時の一番槍と決められていた高橋少佐が俄然張り切って急降下して行ってしまったのです。
「おいっ! こらっ! 待たんかいっ!」と淵田中佐が言ったかどうかも定かではありませんが、いや、きっと叫ばはったでしょう。高橋少佐の勘違いに焦ったと思います。とはいえ、上空、爆音の中、どんなに叫んでも淵田中佐の声は高橋少佐には届かなかったはずで・・・・。
村田少佐も高橋少佐の勘違いにすぐに気づき、「雷撃を邪魔されてなるものか!」と追っかけていきました。
ここで淵田中佐も慌ててト連送(全軍突撃せよ)を送り、いよいよ真珠湾攻撃の開始です。

真珠湾攻撃の第一弾は、湾内の水上機基地に高橋少佐が投弾した250㎏爆弾。
雷撃隊は先陣を奪われた形になったのですが、高橋少佐の信号弾誤認はあまり作戦に支障はなかったようで、その後の真珠湾はまさに「奇襲に成功」という状態になりました。

淵田中佐がのちにこのときの信号弾誤認のことを回想して、
「高橋のヤツは、ちょっとお脳が弱いねん」
と言ったとか、言わないとか・・・・。真偽のほどはわかりませんが、でも、奈良のおっちゃん(淵田中佐は畝傍中学出身)なら言いそうです。
でも、言われた方の高橋少佐は決して「お脳が弱い」人ではありません。
こんなエピソードがあります。16年の末、生まれたばかりの次男が風邪をこじらせ肺炎にかかってしまいました。サルゾールという特効薬が航空隊にあるはず、それを持って帰ってきてくれ、とかかりつけの医者に言われたらしいのですが、高橋少佐は、
「一本たりとも私するわけにはいかない」
と断り、ならばお父さんの血を輸血してあげて、とも言われたらしいのですが、
「自分の体は陛下に捧げたものだ、血を抜いたことで働きに支障があっては」
とそれも断ったそうです。
結局、奥さんの血を輸血したそうなのですが、その甲斐なく次男は亡くなってしまいました。
もちろん、子供が死んでもいいと思っている父親などいないでしょう。それよりも、自分は軍人、滅私奉公、ということが第一にあったのだと思います。
結果、息子さんが亡くなられたことは残念ですが、高橋少佐の「公私混同してはいけない」という心はたたえられるべきものだと思います。

守屋さん、幸子さん、防衛庁にいて、こういう先人がいたことをご存じないはずはないですよね?

参考文献:森史朗『運命の夜明け 真珠湾攻撃 全真相』、阿川弘之『山本五十六』、城山三郎『指揮官たちの特攻』、そこに+ママの妄想

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