ひねもすのたりのたりのたり

１９年１０月２６日。
セブ基地からマバラカットに向かった１機の輸送機に、戦闘３０３の戦闘機搭乗員たちが乗っていました。

前日２５日に特別攻撃隊敷島隊の直掩任務をこなしたかれらは、戦闘３０３のいるマバラカットまで戻れず、セブ基地に着陸。
そこで上から乗機（零戦）を特攻用に置いて帰るように言われ、翌日、輸送機でマバラカットに帰ることになったのです。

西澤廣義飛曹長
本多慎吾上飛曹
馬場良治飛長
（もう１人の直掩隊員・菅川操飛長は敷島隊突入時に戦死）

そして、もう１人、戦闘３０３の先任搭乗員、松本勝正上飛曹。
この人は２４日、敷島隊の直掩隊長をしていて、敵を発見できず、他の直掩隊員や敷島隊本隊と別れてセブに着陸し、西澤さんたちと一緒にマバラカットに戻ろうとしていたのだと最近まで思っていたのですが、２５日に栗田艦隊の上空直掩任務に出てセブに着陸していた・・・・という話もあるようです。
わたしにはどちらか判断できません。

とにかく、戦闘３０３の西澤さん、松本さん、本多さん、馬場さんを乗せた輸送機は、あと少しというところ、ミンドロ島上空で敵戦闘機に襲われ、行方不明に。

数日後に似たようなことがもう一度起こりました。

同じく特攻隊の直掩任務を終えた菅野直大尉以下の搭乗員たちがセブに着陸。
　　　　　　　↓
そこで「乗機を置いて輸送機で帰れ」。
　　　　　　　↓
乗った輸送機が敵戦闘機に襲われる。

ここまで、まるでデジャブのように、西澤さんたちの遭難事件と一緒です。

ここから違うのは、こちらの輸送機（９６陸攻と言われていたような・・・・）にはあの菅野大尉が乗っていたこと。
「どけ！！　おれが操縦する！！」
輸送機の操縦員を押しのけ、戦闘機乗りの菅野さんが操縦桿を奪って操縦したそうです。

戦闘機乗りがいきなりぶっつけ本番で陸攻を操縦できるのか！？とも思いますが、実際にこの輸送機に同乗していて命拾いされたK上飛曹がそう言われるので、本当の話です。
しかも、ふつうにまっすぐ飛べばいいという話ではなく、襲ってくる敵戦闘機をかわしかわし、振り切らなければならないのですから。
「死ぬかもしれない」と思えば、不可能を可能にするのかも知れません。

本当に申し訳ない話、何度も繰り返しいつのことなのか聞いたのに、ノートに記録していません
(T_T)　（いつものことですが酒飲みの雑談の場で聞いた(^_^;)）

「西澤さんの直後じゃないですか！？」
と驚いた記憶があるので、翌日、翌々日、数日後・・・・ぐらいの短期間の間の話です。
忠勇隊（彗星・１０月２７日）の直掩の帰途の話と言われていたと思うのですが・・・・

「あんなことがあったのに、護衛の戦闘機はつけてもらえなかったのですか？」
「そんなん、ない、ない」


K上飛曹たちの輸送機は菅野さんが操縦桿を強奪したためになんとか助かりましたが、撃墜されていてもまったく不思議ではない状況。

数日のうちに、まったく同じ状況で、”海軍の至宝”と”のちの海軍の至宝”を続けざまに失うところでした。