Google
WWWを検索 ひねもすを検索

わたしを呼んだ本2008年01月26日 21時50分48秒

『第九銀河隊指揮官 深井良』深井紳一
今日のタイトルは「わたしが読んだ」本、ではありません、「わたしを呼んだ」本、です。

いままでにほんの何度か、本に呼ばれた、と感じたことがあります。

数年前、文林堂の世界の傑作機『九七式艦上攻撃機』という本が欲しくて欲しくてたまらなかったのですが、本屋に頼んでも「在庫がありません。注文できません」と言われ、文林堂に電話しても「絶版」と言われ、諦めていました。

パパママ一家は日本刀が好きで、毎年GWに京都メッセで開催される刀剣祭りに出かけていました(ここ2、3年ほど行っていませんが)。
同じ会場の、だだっ広い部屋で古書祭りもやっています。そちらも必ず行くのですが、その年も時間をかけて見て回り、本の精算を済ませ、出口に向かって本棚の間を歩いているときでした。
「おい、おい、ママさん」
と呼ばれたのかどうか・・・・。視界の端に赤い背表紙がちらと飛び込んできました。
「おや?」
世界の傑作機シリーズの背表紙じゃあないかい。4、5冊並んでいました。ママは立ち止まって背表紙をよくよく見ました。そのうちの1冊、
『九七式艦上攻撃機』
と、はっきりと書かれてあります。
しかも、古書祭りのくせに、その本はまったくの新品同様でした(たぶん新品)。しかも、しかも、定価の半額でした!

去年の冬、神田に行きました。
そのときは書泉と三省堂に行って、そのまま駅に向かって帰りかけていました。
古本屋の店先に、木箱に入って雑多に並べられている本ってありますよね。
「おい、おい、ママさん、ここだよ」
とたしかに呼ばれたんですよ。
これまた本屋に頼んでも「絶版」と言われて手に入らなかった泰郁彦『八月十五日の空』・・・・。

宇垣特攻のことを読みたかったのです。
中津留達雄隊長の偵察員・遠藤秋章飛曹長のことを知りたくて、この本を探していました。
遠藤飛曹長は予科練・乙9期のベテランです。
宇垣長官は自身の死処を求めたのか、終戦後に部下の搭乗員を引き連れて沖縄に特攻出撃します。

宇垣長官に「降りろ」と言われたにも関わらず、自分は隊長機の偵察員、と頑として聞き入れなかった遠藤飛曹長。狭い偵察席、宇垣長官の膝の間にしゃがみ込んで、沖縄まで向かったそうです。
新婚だったらしい遠藤飛曹長。自分の配置である偵察席を宇垣長官に譲り、どんな気持ちで沖縄まで向かったのか・・・・。

去年の今頃だったか、これは古本ではなく、新刊でした。
『第9銀河隊指揮官 深井良』
本屋では、本棚に入っていて、背表紙しか見えない状態でした。
背表紙だけ見ても「何のこっちゃ」って感じでしょう。恥ずかしながら、このときわたしは銀河がよくわかっていませんでした。
でも、たぶん、海軍機で、このタイトルから察するに特攻隊だなあ、というのはわかりました。
何気に本棚から取り出してみたら、表紙にかっこいい海兵生徒が・・・・。
表紙がかっこいいと、つい中もパラパラと見てみたくなり・・・・。
すぐには買わなかったのですが、何度か立ち読みして、結局買ってしまいました。

タイムマシンがあって、この本を買う前に戻って、もし、この本を買わない、という選択をあらためてしたとしたら・・・・。
わたしのまわりからたくさんの人が消えてしまいます。
わたしがこの一年、この本をきっかけにして読んだ本、知り得たこと、感動したこと、そんなこともたくさん消えてしまいます。

不思議な本です。
たぶん、ブログを見てくれている人の中にも、この本を買っていなかったら知り合えていなかった人が何人もいます。

62年前、家族のことを気にかけながら沖縄へ出撃して帰らなかった一人の青年が、まったく何の縁もゆかりもないわたしの交友関係に影響を与えているって不思議ですよね。
いまから思うと、あの時、深井中尉に呼ばれたんでしょうねー。